自傷行為を繰り返す家族/精神科医・尾崎先生のあおぞら診察室 | アシタノ メインコンテンツにスキップする

自傷行為を繰り返す家族/精神科医・尾崎先生のあおぞら診察室

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この社会において、どのようにストレスに向き合えばいいのでしょうか。精神科医の尾崎京華さんがお答えします

Q.感情の起伏が激しく、急に攻撃的になり、自傷行為を繰り返す家族がいます。何が原因で、どう接したらいいですか。(50代、女性)

 

一定の距離と見捨てない思いを
「境界性パーソナリティー障害」という精神疾患の可能性があります。この疾患は、「自分がどういった人間かわからない」といった自己イメージの不安定さと、「見捨てられるかもしれない」と言った極度の不安と恐怖が常にあり、感情の動揺が生じるたびに暴言、暴力、自傷行為などの問題行動を起こす障害です。人や物事に対して常に優劣をつける「理想化と価値下げ」を極端に行うため、安定した人間関係が築けません。感情は不安定でその制御が困難です。
原因は生物学的な要因や環境的な要因などさまざまですが、患者の約9割が幼児期に外傷体験を有していたという報告もあります。そして、自分の気持ちや言動を認めてもらえない「不認証体験」も関係しているのではないかといわれています。
治療は、患者の認知のずれを正していく「認知行動療法」などを用いたカウンセリングが中心となります。症状によっては、補助的に少量の抗精神病薬などを処方します。女性に多い疾患のため、鉄分やタンパク質不足による発症の可能性もあり、栄養指導を行うこともあります。

問題行動の奥には「愛されたい」「見捨てないでほしい」との思いがあります。だからこそ身近な人への攻撃となりやすいのです。サポートする側が振り回されすぎないよう、「一定の距離」を取りながら「見捨てない」思いを伝えることが大切です。ただ、周囲も疲弊します。家族だけで抱え込もうとせず、専門医への相談が必要です。

教えてくれた人
こころのクリニックひまわり 院長 尾崎京華さん
おざき・きょうか 久留米大医学部卒。精神科医として、認知行動療法や栄養学を取り入れた診療を行う。他の医療機関では物忘れ外来も。5月に広島県海田町でクリニックを開院。
https://cocoro-clinic-himawari.com/

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