映画「時の行路」神山征二郎監督インタビュー/ぷらっとHIROSHIMA
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映画「時の行路」 公開中
監督 神山 征二郎さん
こうやま・せいじろう 1941年岐阜市生まれ。「鯉のいる村」(71年)で監督デビュー。「ハチ公物語」(87年)が大ヒットしたほか、「宮澤賢治その愛」(96年)「郡上一揆」(2000年)「ラストゲーム最後の早慶戦」(08年)など監督作品は多数。「三原市ふるさと大使」も務めている。
派遣切り 非正規の苦闘
–企業優位な裁判の内情も
リーマン・ショック(2008年)をきっかけに、大量解雇された非正規労働者やその家族の苦闘を描いた映画「時の行路」が10日、サロンシネマ(広島市中区)で公開される。この作品が30作目となるベテランの神山征二郎監督は「新型コロナウイルスの感染拡大によって再び世界経済が混乱している今こそ、多くの人に届けたい」と語る。
「派遣切り」に遭った人たちの労働争議と訴訟を軸とした物語。経済苦に追い込まれる家族の姿もつづられる。非正規雇用の人々を「調整弁」として扱い、契約期間内の解除を押し通す大企業、企業寄りに進められる裁判の内情も描かれる。
原作は、実話を基にした作家、田島一さんの同名小説。労働者の約4割が非正規雇用という現状に危機感を抱く人たちが全国各地に組織をつくり、10年近く前から映画化の準備を進めてきた。その思いに神山監督も賛同し、メガホンを取ることに。「日本は戦後、資本主義をひたすら追求し、結果的に不平等な格差社会をつくってしまいました。劣化した資本主義の犠牲ともいえる人々の物語を今撮る価値がある、と思いました」
資金難などで道のりは険しかったものの、主役の石黒賢、妻役の中山忍たち過去の神山作品に出演した俳優が監督の呼び掛けで集まり、完成にこぎつけた。
広島市出身の故新藤兼人監督の門下生としても知られ、新藤監督の下で助監督を務めた「かげろう」(1969年)の撮影では、三原市に約4カ月滞在。監督になってからは大作の傍ら、原爆を題材とした「千羽づる」(89年)などの作品があり、広島とは縁が深い。「この映画が、新たな社会の仕組みを生みだして発展させていこうとする機運の高まりに貢献できればと願っています。広島の方たちにも、ぜひ劇場へ足を運んでほしい」
広島出身の19歳も出演
広島市出身の俳優松尾潤が、主人公の息子涼一役で出演した。父の突然の解雇によって大学進学を諦める役どころ。高校を卒業した昨春、上京してすぐに挑んだ撮影では、「緊張していた僕を、お父さん役の石黒賢さんが『楽しもうよ』と励ましてくれました。おかげで、頑張り屋で家族思いの涼一を、気持ちを込めて演じることができました」。
松尾潤
まつお・じゅん 2001年広島市生まれ。映画「夏休みの地図」(2013年)でデビュー。舞台「死ンデ、イル。」(18年)androp「Koi」Music Video(19年)NHKBSプレミアム「山本周五郎ドラマ さぶ」(20年)などに出演。
<映画「時の行路」あらすじ>
©「時の行路」製作委員会
司法の場で会社と対決
静岡県三島市にある大手自動車メーカーの工場で、派遣社員として働く洋介(石黒賢)は、青森県八戸市に残している妻の夏美(中山忍)と子どもたちに仕送りを続けていた。しかし、2008年のリーマン・ショックによって会社は洋介ら非正規労働者1400人を契約解除してしまう。洋介は仲間と労働組合に入り、司法の場で会社と対決する。
■日本 1時間51分 配給/「時の行路」映画製作・上映有限責任事業組合 監督/神山征二郎(共同監督・土肥拓郎) 出演/石黒賢、中山忍、渡辺大、安藤一夫 上映館/サロンシネマ、福山市神辺文化会館ホール(5月22日)、呉市くれ絆ホール(7月19日)