舞台「民衆が敵」を上演する 劇作家・演出家 古城十忍さん | アシタノ メインコンテンツにスキップする

舞台「民衆が敵」を上演する 劇作家・演出家 古城十忍さん

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元新聞記者の鋭い視点で、社会的な問題を演劇作品にして発表してきた劇作家・演出家の古城十忍さん。主宰する劇団「ワンツーワークス」の新作で、情報化社会をテーマにした「民衆が敵」が5月15日まで、東京の「ザ・ポケット」で公演中です。19日には、広島市東区民文化センターホール(広島市東区)での上演が決まっています。情報が誰かを攻撃し、社会的に抹殺する武器になり得る現代社会で、私たちはどう情報に接していけばいいのか。作品の内容や狙いについて、古城さんに聞きました。

情報収集する男が主人公

 

―どんな物語ですか。

政府のために情報を収集する部署で働く男が、主人公です。男はある抗議デモで中心的な役割を担っているとみなされたために、調査対象となったフリーライターの男の「行動確認」(尾行)・調査を続けます。そのうち意外な事実が、分かってしまいます。男はなおも監視を続けますが、今度は自分自身が何者かに行動確認されていることに気付きます。一方、男には高校教師の娘がいるのですが、学校で起こったいじめ問題をめぐって交流サイト(SNS)などで激しい誹謗(ひぼう)中傷を受けてしまいます。この男の話と娘の話が次第にリンクしていくことになるのですが、ここから先は、ぜひ劇場で。

「匿名の正義」の動機とは

 

―この作品を書く動機は何だったのですか。

一つは、安倍晋三政権時代の「桜を見る会」や「モリカケ」などの問題に象徴される政治の私物化です。当時、政権の長期化と安定を図るために、政府の組織である内閣情報調査室をフル活用して、たとえ一般人でも政権に不都合な人物とみなされたら監視対象とし、印象操作までしていたのではないか―といった話がささやかれました。

 

もう一つは、SNSの中で勝手な正義を振りかざして誰かを徹底的にたたく匿名の人が今なお減らないことです。その動機は何なんだろうという思いがずっとありました。そういった匿名の人は、年収も社会的地位も高い50代男性が多いそうです。攻撃のターゲットを、自分を脅かす存在として潜在的に認識しているからこそ、やり込めようとしてしまうのではないでしょうか。権力のために情報を利用することとSNSでの誹謗中傷は、通底するものがあると思います。自分の地位や優位性を保つために、情報の力を都合よく使って誰かをたたきのめすという点で共通しているのではないかと。

SNSの使い方に注意を

 

―SNSによって、情報が思いもよらない力を持ち始めていますね。

情報をゆがめてプロパガンダに利用することもできるし、フェイクニュースなどを使った情報操作で選挙の対立候補を陥れるような行為も可能です。私たちは抵抗なくSNSをやっていますが、使い方を間違うと情報はとんでもない力を持ってしまうことをもっと認識する必要があります。さらに、自分で発信した情報が自分に刃(やいば)を向けることもあります。また、ネットのニュースサイトにはウクライナの深刻な戦争被害を報じる貴重なニュースと、取材しないでネットから拾い集めただけの「こたつ記事」が並んでいます。私たちは情報の取り扱い方、選び方に細心の注意を払わねばなりません。

過疎地域や人種差別 テーマに

稽古風景

 

―これからの上演作品は。

秋の劇団公演(東京)では、人口減少や少子化が進んで行政サービスもままならなくなった地方都市の物語「消滅寸前(あるいは逃げ出すネズミ)」を5年ぶりに再演します。雲南市の地域住民組織などを取材して書き上げた作品です。2023年1月には、米国の翻訳劇「APPROPRIATE(アプロプリエイト)」を上演する予定です。白人ばかりの家族劇ですが、人種差別がテーマです。今、私が最も興味を抱いている社会課題? それは言えません。企業秘密ですから。

 

 

プロフィル

 

こじょう・としのぶ 1959年生まれ、宮崎県小林市出身。熊本大を卒業した後、熊本日日新聞に入社。政治経済部記者を経て、86年に劇団「一跡二跳」を結成。2005年に文化庁新進芸術家派遣で英国に留学。08年、同劇団を解散。09年に劇団「ワンツーワークス」として再始動。最近の上演作品に「忖度裁判」(20年)、「恐怖が始まる」(21年)など。20年には、宮崎県内で発生した口蹄疫(こうていえき)との闘いを描いたドキュメンタリー・シアター「29万の雫2020」を宮崎市で上演。メーキングがNHKのドキュメンタリー番組になるなど話題になった。

公演情報

 

「民衆が敵」

作・演出:古城十忍

出演:奥村洋治、関谷美香子、池永英介、北澤小枝子、長田典之、東史子、米澤剛志、綾城愛里奈、松戸デイモン、原田佳世子、小山広寿、増田和、金原直史

上演日時:5月19日(木)

開演時間:19:00

会場:広島市東区民文化センターホール

料金:一般前売り2500円、シニア(65歳以上)2300円、高校生以下2000円、団体割引(5人以上)1人2300円(前売りのみ)※当日券はそれぞれ200円増し

※会場は、南区民文化センターホールから変更になりました。お間違えのないようにご来場ください。

 

<配信>

(A)東京公演のライブ配信+見逃し配信

[視聴可能期間]5月9日(月)18:00~5月10日(火)23:59

[チケット販売期間]5月10日(火)18:00まで

*ライブ配信終了後、映像処理に1時間程度を要するため、その間はご視聴できかねます。

*ライブ配信にはアフターイベントは含まれません。

(B)アーカイブ配信

[視聴可能期間]5月15日(日)18:00~5月29日(日)23:59

 

[チケット販売期間]5月29日(日)18:00まで

料金:(A)(B)ともに各3,300円(税込み)

 

配信チケットお申し込み Confetti(カンフェティ)

https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=66026&

 

 

<広島以外の地方公演>

・長洲町公演(熊本県)5月21日(土)18:00 ながす未来館文化ホール

・米子市公演(鳥取県)5月24日(火)19:00 米子市文化ホール メインホール

・宮崎市公演(宮崎県)5月27日(金)19:00 メディキット県民文化センターイベントホール

・小林市公演(宮崎県)5月29日(日)15:00 小林市文化会館小ホール

・熊本市公演(熊本県)5月31日(火)19:00 熊本市健軍文化ホール

・天草市公演(熊本県)6月2日(木)19:00 天草市民センター ホール

 

◎問い合わせ 劇団ワンツーワークス http://www.onetwo-works.jp/

この記事を書いた人

仁科久美(メディア中国編集部 ライター・編集者)

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