ダンス公演「サーカス」の演出・振付・アートディレクションを務める 森山開次さん | アシタノ メインコンテンツにスキップする

ダンス公演「サーカス」の演出・振付・アートディレクションを務める 森山開次さん

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高い身体能力を生かした表現で、美しくも不思議な世界を紡ぎ出す舞踊家の森山開次さん。振り付けや演出、アートディレクターを務め、自らも出演する舞台「サーカス」を9月28日、JMSアステールプラザ大ホール(広島市中区)で上演します。作品のテーマは、「逆さま」がキーワードの「まっさかサまーカス~!」。見る人の想像力をかき立てる魔法のような世界を届けます。作品への思いを、森山さんに聞きました。

道化師への興味 作品づくりに

 

―この作品は再々演です。なぜ広島で。
新国立劇場(東京)の制作で2015年と18年に上演し、評判の良かった作品なんです。僕はもともと、サーカスの道化師に興味があって、NHKの番組「旅のチカラ」(12年)では、米国でピエロの修業をしたほどです。また、同じNHKの幼児向け番組「からだであそぼ」(04~08年)に出演したことから、コスチュームデザイナーのひびのこづえさん、音楽家の川瀬浩介さんと知り合ったり、子どもに接する機会を得たりしたのもきっかけとなりました。おふたりとは、人体の不思議さを表現した「LIVE BONE(ライブボーン)」というパフォーマンスを手掛け、10年から国内外で上演を重ねています。その経験も生かして、「子どもも楽しめる演目を」と手掛けたのが、「サーカス」でした。広島はソロ作品を上演した「KATANA」(06年)以降、いつも温かく迎えてくれる場所。ぜいたくな作品を、広島の皆さんに見ていただけたらと思いました。

サーカスの魅力 ダンスで

 

―原作も台本もない中で、どのようにクリエーションしたのですか。

連想ゲームのようにイマジネーションを膨らませ、積み上げていった感じです。最初は絵を描いたり、言葉遊びをしたりすることから始めました。サーカスは楽しく美しい一方で、どこか怖さや切なさもつきまといます。ピエロの芸のようにユーモラスなシーンもあれば、空中ブランコや綱渡りなどの曲芸を見て、人が落下してしまうのではないかとドキドキしたり、猛獣が観客席に襲いかかるのではとハラハラしたり。そういったサーカスの魅力を、曲芸そのものではなくダンス的なアプローチで表現しました。

 

 

とはいえ、サーカスに直結するモチーフばかり登場させているわけではなくて、舞台の冒頭は「ツクツクボウシ」の鳴き声から始まります。ツクツクボウシは途中で鳴き方を変化させ、クレッシェンドから急に「ジジジ…」とトーンダウンしますよね。そういった「アップダウン」をサーカスの世界と重ねてみたり。一つの方向だけではなく、多方面からものを見られる人間になりたいといつも思っているので、視点を変えることの楽しさも伝わったらいいですね。

また、「まっさかサまーカス~!」というテーマを実現するために、映像のムーチョ村松さんの力をお借りして、床に空の景色を映し出してお客さんに逆さま体験をしてもらう試みなどもしています。

実力派ダンサーやスタッフが集結

―出演するダンサーたちは、多彩でハイレベルです。

サーカスアーティストの渡邉尚さんは、世界レベルの倒立の技を見せてくれます。新体操の元日本代表選手でダンサーの浅沼圭さんと引間文佳さんは、リボンなど手具の投げ技も披露してくれます。他にも、クラシックバレエやコンテンポラリーなど多様なジャンルのダンサーが集まってくれました。単にうまい、きれいといった「技見せ」ではなくて、お客さんとイメージのキャッチボールをしっかりできるダンスを披露したいなと思っています。

スタッフも多彩な「技」を持った人たちです。美術・衣裳のひびのさんはアイデアをどんどん投げてくださり、僕の中になかった発想を与えてくれます。音楽の川瀬さんは、思い付いたキーワードや言葉遊びを送ると曲を作って返してくれるんです。映像のムーチョさんも「もっとこうした方が面白いよ」と僕のイメージを膨らませてくれます。それらを一つにまとめるのは大変ですが、とても楽しい作業です。僕の発想をくみ取って形にしてくれる方たちがいるのは、幸せですね。自分の想像力だけでは、作品がつまらなくなります。スタッフの力によって、最初にイメージしたものとは違う作品になるのが舞台芸術の醍醐味(だいごみ)です。

 

 

―広島でも、特に子どもたちに見てほしいそうですね。

僕は少年時代、生まれ変わったら「植物になりたい」と思っていたほどの引っ込み思案でした。それが、21歳でダンスの魅力に取りつかれ、ダンスが僕を外の世界へと引っ張り出してくれました。子どもたちが劇場で創作舞踊の舞台を見る機会は、そう多くありません。この舞台が子どもたちを、思いもかけない世界へと導いていくきっかけになればいいなと思っています。

プロフィル

 

もりやま・かいじ 1973年、神奈川県相模原市出身。21歳でダンスを始め、2001年からソロ作品の発表をスタートさせる。05年に米国などで発表した「KATANA」で世界的な注目を集め、07年ヴェネツィア・ビエンナーレ招へい。「曼荼羅(まんだら)の宇宙」(12年)で芸術選奨文部科学大臣新人賞。主な作品に「サーカス」(15、18年)、「NINJA」(19、22年)など。東京2020パラリンピック開会式(21年)では演出・チーフ振付を担当。

作品情報

作品情報

舞台「サーカス」

会場:JMSアステールプラザ 大ホール

日時:9月28日(木)午後6時30分開演

チケット:一般6千円、高校生以下2千円、注釈付き一般チケット6千円、大学生・専門学校生団体割引3千円

演出・振付・アートディレクション・出演:森山開次

その他の出演:浅沼圭、五月女遥(新国立劇場バレエ団)、引間文佳、水島晃太郎、宮河愛一郎、渡邉尚、澤村亮

※8月26日から有料配信チケットも販売。視聴チケット2500円(販売はイープラス

公式サイト https://www.kaijimoriyama.com/circus

問い合わせ:TSSイベント事務局☎082(253)1010(平日午前10時~午後5時30分)

この記事を書いた人

仁科久美(メディア中国編集部 ライター・編集者)

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