映画「高津川」錦織監督と俳優・甲本さんに聞く/スポットライト
映画「高津川」
監督 錦織 良成さん(右)
俳優 甲本 雅裕さん
にしこり・よしなり 1962年出雲市出身。「BUGS」(96年)で監督デビュー。「白い船」(2002年)「たたら侍」(17年)「僕に、会いたかった」(19年)など。
こうもと・まさひろ 1965年岡山市出身。バイプレーヤーとして数多くの舞台、映像作品で活躍。最近ではドラマ「ミストレス」(6月)「遺留捜査SP」(11月)など。
清流守る人々丁寧に描く
島根県石見地方を舞台とした映画「高津川」が、八丁座(広島市中区)で公開中だ。メガホンを取った錦織良成監督と主演俳優の甲本雅裕さんは「皆さんの心に、かけがえのない大切な何かが残る作品です」と熱っぽく語る。
ダムがなく、島根県西部を流れる清流の高津川。作品では、その美しい映像を背景に、流域で川を守りながら暮らす人々の日常が丁寧に描かれる。甲本さん演じる牧場主の学や同級生の陽子(戸田菜穂)らは母校である小学校の閉校を受け、全国の卒業生を集めて最後の運動会を開こうと企画する―。
製作のきっかけは、故郷の島根県で数多くの作品を撮ってきた錦織監督に「石見の映画を作ってほしい」という地元の人々の熱い思い。監督は7、8年ほど前から構想を温め、「僕の意図をよく理解してくれ、以前から主役で撮りたいと思い続けてきた」という甲本さんに迷わず、出演を依頼したという。
錦織作品の常連で、今作が初の主演作品という甲本さんは「主演はうれしいけど、その意識が邪魔だと感じて。山や川、牛たちと同等に、土地に溶け込んで見えるかを大切に演じました」。撮影中は地元の人たちとの交流も深まり、ラスト近くの重要なシーンでは「出会った人々の顔が浮かび、自然と涙があふれてきました」と振り返った。
物語には、石見神楽など伝統文化の継承や過疎、高齢化など今の社会的な問題がちりばめられている。錦織監督は「見て見ぬふりしてきたことを、エンターテインメントとして示したかった。地方ではなく、日本を描いた映画として見てほしい」。