【あし太がめぐる民芸品#11】岡山県 備前焼
庶民の生活に寄り添う工芸品を『民芸品』と呼び、その土地ならではの技法が各地で継承されています。
広島のお隣で作られる伝統的な陶器をご紹介します。
自然に生まれるオンリーワンの模様や色合い
広島県民にとっても身近な伝統工芸品の一つである、岡山の備前焼。岡山県南東部で作られる陶器で、そのルーツはなんと古墳時代の「須恵器(すえき)」にまで遡ります。時代の流れとともに製法が変化し、鎌倉~安土桃山時代にかけて、現在のような赤褐色が備前焼のスタンダードになったそう。良質な陶土で作られる備前焼は堅くて割れにくく、日常使いできる茶器やすり鉢などの形で活躍。また、その長い歴史から骨董品としての価値も見出され、1982年には国の伝統的工芸品に指定されました。
備前焼の大きな特徴は、窯の状態によって変化する焼き上がりの表現。陶土を成形して乾燥させたのち、絵付けをせず、釉薬も使わず焼き上げます。焼成時の窯の状態によって焼き色は都度変化し、炎によって自然に生まれる模様は「土と炎の芸術」とも称されます。
窯の中で炭や灰に埋もれ、直接炎が当たらないままいぶし焼きされたものは青色やグレーがかった仕上がりに。灰が付着したまま焼かれたものは胡麻がかかったようなぶつぶつとした模様に。作品同士が窯の中でくっつかないよう、ワラが巻かれたものには線のような模様がつくことも。表面にできる小さな凹凸は、使い込むことによって徐々に丸みを帯び、手に馴染む「自分だけ」の器が育っていきます。
土の風合いをしっかりと残し、同じものは二つとない備前焼。中国地方を代表する民芸品を食卓に迎えてみませんか。