舞台「星の王子さま」を演出、振付、出演する 舞踊家・森山開次さん | アシタノ メインコンテンツにスキップする

舞台「星の王子さま」を演出、振付、出演する 舞踊家・森山開次さん

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国内外で活躍する舞踊家・森山開次さんが、出演だけでなく演出や振り付けも手掛けるコンテンポラリーダンスの舞台「星の王子さま―サン=テグジュペリからの手紙―」が8日、広島市中区のJMSアステールプラザ大ホールで開かれます。2020年の初演では、ダンサーたちが鍛え抜かれた体とテクニックを駆使し、哲学的で解釈も無数にある「星の王子さま」をまるで語るかのように表現しています。また、ファンタジックな日比野克彦さんの美術、ひびのこづえさんの衣装も評判となりました。作品について、森山さんに聞きました。

ダンスこそ表現できる作品

 

―「星の王子さま」をダンスの舞台にしたのはどうしてですか。

この作品は、お客さまの想像力をかき立てるダンス表現こそ合うのでは、と思っていました。「ゾウを飲み込んだウワバミ(大蛇)」の絵が何に見えるか、という物語の有名な問い掛けのように、見たままの形、読んだ言葉の響きだけではないサン=テグジュペリの大切なメッセージをダンスなら伝えやすいのではと。今回は初演の構成などを踏襲し、作品のブラッシュアップに力を入れます。稽古場ではコミュニケーションの時間をぜいたくに取って、出演者全員で発見の旅を続けていきます。

 

―副題に、「サン=テグジュペリからの手紙」とありますね。

パイロットだったサン=テグジュペリには郵便飛行の経験があり、第二次世界大戦中は偵察機を操縦していました。作品をより深く感じてもらうために彼自身の人生を重ね、「飛行士」の役にサン=テグジュペリ、「歌声」や「バラの花」には彼の妻コンスエロを投影させています。飛行機は人類のロマンをかなえるテクノロジーでもありますが、同時に兵器としても発展しました。彼はそれを自覚し、葛藤していたと思います。彼が飛行士として俯瞰(ふかん)していた景色を、お客さまにも感じていただけたらうれしいです。

身体表現で会話する踊り手たち

 

―「王子」のアオイヤマダさんをはじめ、魅力的なダンサーが集まりました。

アオイさんは多彩な表情を持っていて、服やメークによっても変化できる人。白い綿毛のようなひびのさんの衣装を着ると、スッと王子になっていく憑依(ひょうい)体質のダンサーです。初演の時よりも僕と積極的に話し、考えを共有しようと努めてくれて成長を感じます。他のメンバーも、普段から身体で言葉を紡げるダンサーたちです。「キツネ」と王子が大切な友だちになるシーンでは、身体表現のみで会話を成り立たせてくれています。また、僕自身が演じる「蛇」は王子をかむことで「殺す」という意味だけでなく、「(王子自身の星に)届ける」「成長させる」など複数の捉え方ができる謎の存在。矛盾を含んだとらえどころのない蛇を表現したいですね。

 

―「大切なものは目に見えない」という原作の名言をダンスでどう表すのかと、尋ねられることが多いのでは。

僕はあの言葉を聞くと、「大切なものは見えるよ」と言いたくなります。僕たちは視覚的に見えるダンスに命を懸けているし、大切なものが形として見えなくても、ダンスの表現を通して見えてくるかもしれません。星の王子さまをダンスでやる意義はそこにある気がします。

「人の愚かしさ」問い続ける

 

―ロシアのウクライナ侵攻で世界中に不穏なムードが漂う中、この作品を送り出す意味は。

「王様」や「うぬぼれ屋」など、王子が訪ねる星の住人には誰もが秘めている愚かしさや滑稽さがあり、それは愛らしさでもあります。とはいえ、その愚かしさが膨らみ過ぎると悲劇につながります。さらに、人は愚かな行為を繰り返してしまいます。その代表が戦争です。

 

この作品に触れて、自分自身をみつめる時間にしていただけたら。僕自身は「人の愚かさ」というテーマに取り組み続けていくのだろうなと思っています。

プロフィル

 

もりやま・かいじ 1973年、神奈川県相模原市出身。21歳でダンスを始め、2001年からソロ作品の発表をスタートさせる。05年に米国などで発表した「KATANA」で世界的な注目を集め、07年ヴェネツィア・ビエンナーレ招へい。「曼荼羅(まんだら)の宇宙」(12年)で芸術選奨文部科学大臣新人賞。主な作品に「サーカス」(15、18年)、「NINJA」(19、22年)など。東京2020パラリンピック開会式(21年)では演出・チーフ振付を担当。

作品情報

舞台「星の王子さま―サン=テグジュペリからの手紙―」

会場:JMSアステールプラザ 大ホール

日時:2月8日(水)午後7時開演

チケット:一般7800円、中学生以下5800円

演出・振付・出演:森山開次

その他の出演:アオイヤマダ、小㞍健太、酒井はな、島地保武,坂本美雨ほか

問い合わせ:TSSイベント事務局☎082(253)1010

この記事を書いた人

仁科久美(メディア中国編集部 ライター・編集者)

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