舞台「サーカス」の衣裳と美術を担当 コスチューム・アーティストのひびのこづえさん | アシタノ メインコンテンツにスキップする

舞台「サーカス」の衣裳と美術を担当 コスチューム・アーティストのひびのこづえさん

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既成概念を軽々と飛び越え、異次元の世界へといざなってくれるコスチューム・アーティストのひびのこづえさん。演劇では野田秀樹さん主宰のNODA・MAP、テレビではNHK・Eテレの番組「にほんごであそぼ」など幅広い分野で衣裳や美術を手掛けています。9月28日、JMSアステールプラザ大ホール(広島市中区)で上演されるダンスパフォーマンスの舞台「サーカス」では衣裳・美術を担当し、演出・振付・アートディレクションを担う舞踊家の森山開次さんやダンサーと共に夢の時間を届けます。この作品と衣裳や美術に込めた思いを、ひびのさんに聞きました。

ピエロに「虫」を投影

 

―「サーカス」は新国立劇場(東京)で2015年と18年に上演し、高く評価された作品です。衣裳には、どんな工夫をしていますか。
舞台の床に鮮やかな映像を映す演出があり、ダンサーにも映像が重なるので、森山さんが演じるピエロを黒、他の7人のピエロを白と、モノトーンを基調とする衣裳にして色を過剰に使わないようにしました。白いピエロのデザインは「虫」をイメージしています。虫ってひっくり返ると、足をバタバタさせたりして面白いですよね。そういった虫の動きとピエロがリンクされるといいなと思って。ダンサーの個性に合わせて形や柄も、少しずつ変えています。「サーカス」をストレートに表現しても世界観が小さくなると思ったので、自由に発想して作っています。

 

特徴的な衣裳 早めに準備

 

―バレリーナの衣裳で踊る「ミラー姫」にも驚かされます。

ダンサーは頭にミラーボールのような被り物を着けていて、ミラーの隙間からしか外を見られません。視野が狭くて申し訳なかったのですが、過去の公演ではダンサーが見事に着こなして踊ってくれました。他にも、ライオンやウサギなどの被り物が登場します。顔を隠していても、感情までそこはかとなく伝えてくれるダンサーたちは素晴らしいですね。

―舞台美術も夢があってわくわくします。

天井から下がっている飾りは、3種類の風船を組み合わせて作っています。時には風船が外れて上がってしまうハプニングも起こりますが、そういう場面もきれいで胸がジーンとなります。ライブの面白さを実感します。

 

―ひびのさんが参加する森山作品では、稽古からダンサーが衣裳を着るそうですね。かなり早くから準備すると伺いました。

オファーをいただいたら、なるべく早く打ち合わせをしてもらって、2週間ほど後にはデザイン画を送ります。森山さんのイメージが固まらないうちに、私の案をぶつけます。思い付いたら、やりたくなっちゃうじゃないですか。ダンサーには、実際の衣裳を稽古中に着て慣れてもらうようにお願いしています。演出や振り付けをする森山さんが私の思いを尊重して許してくださるので、ありがたいです。

衣裳は「つかみ」の役割を担う

 

―美術や衣裳は、出演者と同じように舞台での存在感が大きいですね。

私はダンスパフォーマンスの美術や衣裳を手掛けるのが、とても好きです。身体能力の高いダンサーの体や動きとコスチュームがシンクロするのがいいですね。衣裳は人が着て動くからすてきなんです。動いているのを見るのが舞台衣裳の醍醐味(だいごみ)です。

 

ダンスは演劇とは違って言葉(せりふ)による説明がないので、「入りづらいな」と感じるお客さまがいるかもしれません。私の美術や衣裳は、お客さまがパフォーマンスに集中して入り込むまでの「つかみ」や導入の役割を担っていると思っています。

 

この作品は、ダンサーの動きが多彩で面白くて、言葉がなくても十分ストーリーを感じられるところが魅力です。大人も子どもも、劇場で楽しんでほしいですね。

プロフィル

 

ひびの・こづえ 静岡県出身。東京芸術大美術学部デザイン科を卒業。コスチューム・アーティストとして演劇や映画、現代舞踊、テレビなど発表の場は多数。最近の演劇では野田秀樹作・演出の「フェイクスピア」(2021年)、「兎、波を走る」(23年)など。森山さんとの作品では「LIVE BONE」(10年~)をはじめ、「星の王子さま-サン=テグジュペリからの手紙-」(20、23年)など。テレビでは、NHK「にほんごであそぼ」のセットデザインや衣裳も03年から担当。

作品情報

作品情報

舞台「サーカス」

会場:JMSアステールプラザ 大ホール

日時:9月28日(木)午後6時30分開演

チケット:一般6千円、高校生以下2千円、注釈付き一般チケット6千円、大学生・専門学校生団体割引3千円

演出・振付・アートディレクション・出演:森山開次

その他の出演:浅沼圭、五月女遥(新国立劇場バレエ団)、引間文佳、水島晃太郎、宮河愛一郎、渡邉尚、澤村亮

※8月26日から有料配信チケットも販売。視聴チケット2500円(販売はイープラス

公式サイト https://www.kaijimoriyama.com/circus

問い合わせ:TSSイベント事務局☎082(253)1010(平日午前10時~午後5時30分)

この記事を書いた人

仁科久美(メディア中国編集部 ライター・編集者)

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