読書日和／『第一阿房列車』『ブギの女王・笠置シヅ子』

（新潮文庫）693円

秋晴れ爽やかな観光シーズン到来です。列車に揺られ、気が向けば下車してその土地をそぞろ歩き。名所旧跡やグルメを満喫して再び列車に身を任せ―。そんな観光旅行とはいささか趣が異なるものの、読む人をあまねく鉄路へと誘う一冊を紹介します。

明治生まれの文豪・内田百閒。昭和の終戦間もない時代、百閒は借金までして一等車に乗り、国鉄職員の「ヒマラヤ山系」こと平山三郎を従えて日本各地を巡る鉄道旅に出ました。行き先はなく、列車に揺られることが目的。合理主義の真逆をいく、ある意味究極のぜいたくで自由な旅とも言えましょう。

偏屈でならした百閒の漫遊旅が軽妙洒脱（しゃだつ）な筆致でつづられ、気づけば繰り返し読みたくなります。阿房（あほう）列車旅はシリーズ化され、「第二」「第三」へと続きます。百閒と共に途方のない鉄道旅に出かけましょう。

（潮文庫）990円

10月に放送が始まったNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。波乱万丈の人生を生きた笠置シヅ子の一代記が、どのように描かれるのでしょうか。ドラマ制作の参考にしている原案本が、この度文庫化されました。戦後占領期の国民的スターの生涯のほか、昭和芸能史や戦後史も堪能できる傑作評伝です。

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