映画「カツベン!」周防監督インタビュー/スポットライト
映画「カツベン!」 来月13日公開
周防 正行監督
すお・まさゆき 1956年東京都生まれ。立教大を卒業後、「ファンシイダンス」(89年)で監督デビュー。「シコふんじゃった。」(92年)「Shall we ダンス?」(96年)「それでもボクはやってない」(2007年)など。
日本映画の「夜明け」活写
話芸の伝統が生んだ弁士
大学相撲、社交ダンスといったユニークな題材を次々と映画にしてきた周防正行監督。12月13日から全国公開される最新作「カツベン!」は、サイレント映画で活躍した「活動弁士」がモチーフだ。「エネルギーに満ちた邦画の黎明(れいめい)期を、皆さんに知ってほしい」と言葉に力を込める。
舞台は大正時代。モノクロで無声だった映画=活動写真には、「しゃべり」で物語を進行させる活動弁士が人気を集めていた。人気弁士として成長する青年俊太郎(成田凌)を軸に、彼の初恋の人で女優の梅子(黒島結菜)や泥棒の安田(音尾琢真)ら多彩な人物がからみ、テンポよくストーリーが展開する。
ⓒ2019 「カツベン!」製作委員会
「フィルムからデジタルに移行し、スマホなどで動画を見る人が増えている今、映画の定義が変わろうとしています。だからこそ、日本映画の夜明けを見つめたいという思いが強かったんです」と周防監督。見どころの一つは、映画初主演の成田が再現した弁士独特の話術だ。撮影の4カ月ほど前から、今では十数人しかいないというプロの弁士を成田に付けて猛特訓させた。「彼のしゃべりが見事でなければ、この映画に説得力がなくなります。とにかくカツベンを仕上げて、と注文していた。彼が努力できる人でよかったと思います」と会心の笑みを浮かべた。
また、「金色夜叉(こんじきやしゃ)」など劇中の無声映画にも凝った。エンドクレジットの1作品を除き、オリジナルが現存しているものは当時と同じように、そっくり模倣して撮影。「劇中映画だけは可能な限りフィルムで撮らせてもらい、本編にマッチさせながら僕が思い描いた大正時代を表現した」。草刈民代、上白石萌音ら周防映画でおなじみの俳優も多数出演させた。
活動弁士は、欧米では定着しなかった日本独自の文化という。浄瑠璃や琵琶法師の語り、落語など「話芸」がふんだんにあったこの国の伝統が、弁士という存在を生み出した。「昔の監督は、弁士の語りがあることを前提に作品を作っていた。それがもしかしたら、小津安二郎や溝口健二、黒沢明ら巨匠の独特の映画スタイルを生むきっかけになったかもしれない。日本映画の奥深さも感じてもらえたらうれしいですね」。エンディング曲の「カツベン節」は、広島市出身の奥田民生が歌っている。
<映画「カツベン!」あらすじ>
100年ほど前の大正時代、映画がモノクロのサイレントだったころには楽士の奏でる音楽とともに独自のしゃべりで盛り上げる「活動弁士」が活躍していた。弁士に憧れる染谷俊太郎(成田)は騒動に巻き込まれ、小さな町の映画館に流れ着く。しかし、そこはくせ者ぞろいの映画館で・・・。
出演/成田凌、黒島結菜ほか
監督/周防正行
上映館/広島バルト11、109シネマズ広島、イオンシネマ広島西風新都、TOHOシネマズ緑井、八丁座、T・ジョイ東広島、福山コロナワールド、エーガル8シネマ