コーヒーの基本と最新事情
専門家3人に学ぶ
コーヒーの基本と最新事情
新しいコーヒー店が広島で最近増えています。今回の特集では地元のコーヒーショップなどで働く専門家3人に集まってもらい、座談会を開催。コーヒーの魅力や豆の違いを楽しむポイントを語ってもらいました。さらに、2017年以降に開店した新店舗を紹介。店の特徴やお薦めの一杯を聞きました。
産地で異なる風味感じて
Progress lifestylecoffee代表 田中 裕士さん
1982年福岡県宗像市生まれ。広島市中区のコーヒーショップ「Progress lifestylecoffee」を2016年オープン。地元のコーヒー店が集まりイベントなどを開く団体「CUE COFFEE CREATE」代表。問い合わせ082-244-0170
焙煎の音の違い聞き分け
LIFE MARKET HARBOR CLUBバリスタ 大野 方裕さん
1989年広島市東区生まれ。南区にあるカフェ「LIFE MARKET HARBOR CLUB」で2019年5月から焙煎を担当。バリスタ兼カメラマン。問い合わせ082-207-1885
季節に合う豆をブレンド
YUYA ROAST代表 藤井 勇也さん
1989年広島市南区生まれ。2015〜17年東京都小笠原村のコーヒー園に勤務。19年から「地下ロースター」として南区の自宅でコーヒーを焙煎し、イベントやネットなどで販売している。問い合わせ yuyaroast.com
ー広島に新しいコーヒー専門店が増えています。
田中 広島にはもともと喫茶文化があり、コーヒーの消費量は全国でも多い方です。スターバックスなど良質なコーヒーを手軽に飲める大手コーヒーチェーン店が街中にあふれる中、最近では豆の産地や品種を特定したスペシャルティコーヒーを扱う店が急増。産地により風味の違いが楽しめるのが魅力です。広島は他地域に比べて専門店が少ないので、店舗数はさらに増えると思います。
藤井 広島では新しく焙煎方法に特化した店が出てきました。例えば浅いりにこだわる広島市南区の「shimaji coffee roasters」や、深いりコーヒーを提供する西区の「イリガン珈琲店」などが挙げられます。焙煎する温度や量により違いますが、一般的に浅いりの焙煎時間は10分以内です。豆自体の特長が出やすく、酸味と香りのよさを感じられます。一方、深いりは苦味とこくが楽しめます。
大野 これからはさらにクオリティーの高い品種が求められると思います。特にエチオピア原産の「ゲイシャ」という品種が注目されています。東京では専門店もできているほどです。紅茶のような淡い色で、花のような香りが味わえます。
ー3人がコーヒーにはまったきっかけは。
藤井 大学生の時に「おいしいコーヒーの経済論」(太田出版)という本を読んだのがきっかけです。本の舞台になったタンザニアまで出掛けて生産者にも話を聞きました。大学卒業後は、東京の小笠原諸島のコーヒー農園で働きました。そこでコーヒーの作り方などを紹介するツアーガイドも担当して知識を身に付けました。
田中 コーヒーはもともと苦手でしたが、25歳の時に紅茶のようにフルーティーなコーヒーを東京で飲んで一気に好きになりました。それ以来、コーヒーの奥深い魅力を伝えたいと思うようになりました。
大野 写真家のオーナーが経営するカフェで働き始めたのがきっかけです。本格的に焙煎を始めたのは昨年から。焙煎の熱で豆がはじける音を「はぜ音」といいます。最初はパチパチ、2回目はピチピチという音が響き、これが焙煎度合いの合図になります。おいしいコーヒーを作るために、はぜ音を聞き逃さないようにしています。
ー自身のコーヒーに対するこだわりは。
藤井 季節に合わせたブレンドにこだわっています。クリーム系のスイーツを食べる機会が多いクリスマスは、ブラジル、グアテマラ、ルアンダ産の3種類の豆をブレンド。こってりし過ぎずさらっとした風味の商品を作りました。ブレンドコーヒーはどの店でも店主の個性が出ると思うので、最初にオーダーするのもお勧めです。
田中 コーヒーの表面に葉っぱや動物などの絵をミルクピッチャーで描くラテアートに力を入れています。味の良さはもちろんですが、かわいい見た目も重視。コーヒーが苦手な人にもアプローチして、コーヒー好きを増やしたいです。
大野 抽出の道具にこだわり、空気の圧力を使ってコーヒーを入れる「エアロプレス」を使っています。ペーパーやネルドリップと比べて技術の差が出にくく、味にばらつきがないのがメリットです。雑味が出ないように79度と低温のお湯で抽出します。中いりのエチオピアの豆を使うと、独特のフルーティーな香りが広がります。
ー広島でお気に入りのコーヒー店は。
田中 広島市西区の「MOUNT COFFEE」です。コーヒー豆を海外に買い付けに行き、幅広い味のコーヒー豆をそろえています。今まで飲んだことのない味を発見できると思います。お客さんもいろんな世代の方が訪れていますね。
藤井 東広島市の「アースベリーコーヒー」は全国的にも有名な店で、焙煎や抽出の技術が高いのでずば抜けておいしいです。店内で試飲できるのも魅力です。一般的にコーヒーは冷めると酸味が強まったり雑味が出たりするのですが、ここはクオリティーが高いまま。数多くのカフェがこの店から豆を仕入れています。
大野 広島市中区の「てらにし珈琲店 本店」はコーヒーの味だけでなく、サービスが素晴らしいです。トイレで席を外したら冷めないようにカップにふたがしてあったのには驚きました。
ー自宅でコーヒーを上手に入れるこつは。
藤井 紙のフィルターを使う場合は、1杯分の粉15〜20グラムを入れ、85〜90度のお湯で約30秒蒸らします。2分くらいかけて円を描くように湯を注ぎます。周りの土手を崩さないように注ぐのもこつ。最後まで抽出すると雑味が出てしまうのでNGです。
ーコーヒーをおいしく飲む方法は。
田中 ワイングラスのように丸みのあるカップでコーヒーを飲むと香りを感じやすいですね。口に入れる時にコーヒーを霧状に吸ってテイスティングすると香りが広がります。
大野 野外で飲むコーヒーは格別です。冷たい空気の中で飲むとさらにおいしく感じます。家の場合はベランダに出てコーヒーを楽しんでいます。
藤井 同感です。自分が主宰者となって、たき火で豆を焙煎してコーヒーを楽しむイベントを広島市内で開いています。
田中 スイーツとのマッチングにもこだわってほしいですね。ベリーのような味のコーヒーにはチーズケーキがよく合います。
ーコーヒーの奥深い話は尽きませんね。
田中 おいしいコーヒーを提供するために広島の個々の店が惜しみなく努力していると思います。みなさんにも自分の好きな一杯を見つけてほしいですね。
この座談会に登場したコーヒー店の住所
・shimaji coffee roasters( 広島市南区的場町1-6-8)
・イリガン珈琲店 (広島市西区横川町1-6-20)
・MOUNT COFFEE (広島市西区庚午北2-20-13)
・アースベリーコーヒー (東広島市西条昭和町6-2)
・てらにし珈琲店 本店 (広島市中区宝町6-15)
\教えてイロハ/
コーヒーって
「コーヒーチェリー」(左)と呼ばれる木の実から種子(中)を取り出します。それを精製した「生豆(なままめ)」(右)を焙煎して粉にして、湯でコーヒーを抽出します。
豆の種類
主にアラビカ種とロブスタ種の二つ。アラビカ種は高品質でコーヒー専門店などで販売され、ストレートで飲む場合がほとんど。ロブスタ種はインスタントコーヒーなどに使われます。それぞれ多くの品種があり、原産地や気候の違いなどにより味が異なります。
焙煎の違いは
生豆をいる加熱温度や時間を抑えたものを浅いりといい、長くいったものを深いりと呼びます。浅いりは酸味が強く香り豊かで、カフェインは多めです。深いりは苦味と香ばしさが味わえます。
抽出の仕方は
紙のフィルター以外に、布フィルターでまろやかな味を出すネルドリップ、蒸気圧ですっきり香ばしい味を抽出するサイホンなどがあります。最近は、抽出器とポットが一体化したフレンチプレスや、空気の力で抽出するエアロプレスもおいしいコーヒーを簡単に作れると注目されています。
<取材協力>
cicane-liquid stand-
日替わり店主がドリンク提供
昨年オープンしたホテル「KIRO 広島」1階にあるドリンクスタンド。約20店舗の店主が交代して、コーヒーや紅茶などの飲み物を提供しています。実店舗を持たない店主もいて、個性的なクリエーターの魅力に触れられます。
広島市中区三川町3-21
082-545-9160
8:00〜17:00
不定休