【あし太がめぐる民芸品#6】岡山県 曲げ輪っぱ
庶民の生活に寄り添う工芸品を『民芸品』と呼び、その土地ならではの技法が全国各地で継承されています。
今回は、私たちの暮らしにも馴染みのある弁当箱をご紹介。
大切に手入れして育てる、世界に一つの弁当箱
古き良き日本の伝統工芸品である「曲げ輪っぱ」の弁当箱。オシャレでコンパクトなデザインから、現代でもこの弁当箱を日常使いしている人は多いのではないでしょうか。
岡山県で作られる曲げ輪っぱの弁当箱は、木の中でも柔らかい素材の杉やヒノキなどの針葉樹を曲げて筒状にし、丈夫な山桜の樹皮で綴(と)じ合わせます。岡山県北部の厳しい寒さに耐えて育ったという丈夫な木材は、頑丈さだけでなく、密度の高い木目の美しさも特徴です。
杉やヒノキで作られた弁当箱が古くから愛される理由には、木材が持つ自然の作用があります。ごはんから出る水分を吸収し、ふっくらとした食感を保ってくれる調湿作用、ごはんが傷みにくい殺菌作用、自然の木の香りと木目の美しさ…。そんな木の作用を生かすため、曲げ輪っぱには塗装が施されていないものがほとんどです。無塗装の場合、水分を吸いすぎてしまわないように水気をよく切って乾燥させたり、電子レンジや食洗機を使用できなかったりと、生活の利便性としては手間がかかる一面も。しかし、ていねいに使い込むことによって木の風合いが変化していけば、世界に一つだけの「マイ弁当箱」に愛着が湧いていくのかもしれません。
食材のおいしさを保ちながら、料理の見た目も引き立ててくれる「機能美」にすぐれた曲げ輪っぱ。弁当のフタを開けた時の、あたたかく優しい気持ちを思い出させてくれますよ。