【あし太がめぐる民芸品#12】沖縄県 琉球ガラス
庶民の生活に寄り添う工芸品を『民芸品』と呼び、その土地ならではの技法が各地で継承されています。
今回は、南国ならではの涼やかな人気ガラス工芸をご紹介。
美しい色合いが生まれたのは「資源の再利用」から
鮮やかな色彩と、波打つ海のような凹凸。南の島らしい「琉球ガラス」は、沖縄の人気土産として広く知られています。
琉球ガラスの製造が始まったのは明治時代中期。それまで沖縄では、ガラス製品は本土から輸入されていました。しかし、船での輸送では商品の破損が多いことから、本土から職人を招いて沖縄でのガラス製造が始まりました。
ところが、戦時中の空襲によってガラス工房は壊滅的な被害を受けます。工房を失い、原料も手に入りづらくなった戦後、米軍施設で廃棄されていたビールやジュースの瓶を原料にする「再生ガラス」の製造がスタート。茶色や緑、水色と、廃瓶の色味を残した独特の風合いが注目を集め、アメリカと日本を行き来する駐在兵の土産物として需要が急増。琉球ガラスは復興を遂げました。また、琉球ガラスの魅力の一つである「気泡」も、再生ガラスならではの特徴。不純物によってどうしても残ってしまう気泡に偶然の美しさを見出し、今ではわざと気泡が入る製法も用いられています。
現在は、廃瓶そのものの減少やさらなる人気の高まりによって、着色剤と原料ガラスを用いた琉球ガラスが主流に。それでもなお、廃棄される窓ガラスや一升瓶などを使う工房は残っており、資源を再利用する社会的な取り組みとして「再生ガラス」が再注目されています。琉球ガラスを選ぶ際、どのような原料を使っているのか想像するのも楽しみの一つになりそうです。