舞台「オルレアンの少女―ジャンヌ・ダルク―」に出演する俳優・宮地大介さん | アシタノ メインコンテンツにスキップする

舞台「オルレアンの少女―ジャンヌ・ダルク―」に出演する俳優・宮地大介さん

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演技派のバイプレーヤーとして、舞台を中心に活躍する呉市出身の俳優・宮地大介さん。最近では、難役の一人芝居や不条理劇などにも挑戦し、ますます演技の幅を広げています。6日からシアタートラム(東京)で始まる舞台「オルレアンの少女―ジャンヌ・ダルク―」(演出・深作健太)にも出演。個性的な脇役として登場し、14~15世紀の英仏百年戦争を描いた作品を盛り上げます。作品へのアプローチや演劇の魅力について、宮地さんに聞きました。

現代の戦争とリンクした作品

 

―「オルレアンの少女―ジャンヌ・ダルク―」の稽古中ですね。18世紀に活躍したドイツの劇作家シラーの戯曲を原作とした作品で、戦争がテーマです。

ジャンヌ・ダルク役を務める夏川椎菜さん以外の俳優6人が英仏軍両方の複数の人物を演じ分け、敵も味方も同じ人間だ、というメッセージを伝えようとしています。私はジャンヌの父親とブルゴーニュ公など4役を演じます。父親は神の声を聞いて仏軍の救世主となった娘を、魔女だと告発してしまいます。ちょっと屈折していて危険な人ですよね。ブルゴーニュ公も、仏王とは縁戚関係なのに英国軍の味方をしたり、仏軍と和睦したりとなかなかのくせ者。演じ分ける楽しさがあります。登場人物たちの滑稽(こっけい)な面も描くので、重く深刻な作品ではありません。

 

面白いのは、戦争がメインテーマなのに戦闘シーンは全くないところ。会話劇で戦況が語られます。また、登場人物が素に戻り、ロシアのウクライナ侵攻や9・11の米国同時多発テロ事件、ヒロシマ・ナガサキの原爆投下など現代の戦争を語るシーンが挿入されます。歴史上の遠い国の物語と思われがちですが、現代とリンクさせた構成は面白いと思います。

一人芝居や不条理劇にも挑戦

 

―5月に一人芝居で演じた「ブリキの太鼓」(演出・深作健太)も戦争ものでした。

ドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラスの長編小説が原作で、1979年公開の映画でも有名な作品です。3歳で自ら成長を止めてしまった少年を筆頭に、ナチスドイツが支配した時代に生きる13人を演じ分けました。100分もある一人芝居はせりふも膨大で、とにかく必死でした。

歴史上の戦争を扱う芝居に取り組んでいると、現実でもウクライナ侵攻のような戦争が進行していることが不思議に感じられます。どんな時代設定だろうと、そこに戦争というものが描かれている時点で、それは現代劇なんですよ。

 

 

―俳優仲間と立ち上げた演劇ユニット「みやのりのかい」も始動しました。

共演が多かったジョニー高山さんと組み、東京の小劇場で8月に二人芝居の「今は昔、栄養映画館」(演出・小宮孝泰)を上演しました。劇作家・竹内銃一郎さんの戯曲を原作とした不条理劇です。新作のお披露目や祝賀会を控えた映画監督と助監督が、「あと5分で始まる」と焦って準備しながら、いつまでたっても訪れない客を待つという話。私が演じる映画監督は、高山さんの助監督になんのかんのと難癖をつける人物です。そういう面倒くささを楽しんで演じました。

劇中でのやりとりはコミカルで喜劇ですが、2人が死後の世界で戯れ続けている世界だと解釈すると、とても切ない。悲劇にもなり得る芝居なんです。

 

演劇は「遊び」、息絶えるまで

 

―宮地さんにとって、演劇は。

仕事というより、すごくぜいたくな「遊び」です。その遊びを真剣に、息絶えるまで続けていこうと思っています。「目指す役者像は」と問われた時に、「名前を思い出せないんだけど、あの役者さん誰だっけ、という存在」と言ったことがありますが、むしろ前よりその思いは増しているかもしれません。

プロフィル

 

みやち・だいすけ 1968年生まれ、呉市出身。京都芸術短大、日活芸術学院を卒業後、96年にコントコンビ「がんす」を結成してデビュー。芸能事務所「タイタン」に所属し、俳優活動も本格的にスタートさせる。舞台を中心にキャリアを重ね、最近の演劇作品では、「ドン・カルロス」(2021年11月)、「ブリキの太鼓」(22年5月)、「梶山太郎氏の憂鬱(ゆううつ)と微笑」(22年6月)、「今は昔、栄養映画館」(22年8月)など。映画では深作健太監督「夏休みの地図」(13年)、井筒和幸監督「無頼」(20年)、斎藤工監督「フードロア:Life in a Box」(20年)、ドラマでは「この世界の片隅に」(18年)など。

 

 

作品情報

演劇「オルレアンの少女―ジャンヌ・ダルク―」

出演:夏川椎菜、溝口琢矢、松田賢二、峰一作、宮地大介、愛原実花、李真由子

特別出演:PANTA(頭脳警察)※大阪公演のみ

作:フリードリヒ・フォン・シラー

翻訳・ドラマトゥルク:大川珠季

演出:深作健太

 

<東京公演>

日程:2022年10月6~9日

会場:シアタートラム

<大阪公演>

日程:2022年10月15、16日

会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

この記事を書いた人

仁科久美(メディア中国編集部 ライター・編集者)

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