一人芝居「森の直前の夜」を上演する 俳優・西藤将人さん | アシタノ メインコンテンツにスキップする

一人芝居「森の直前の夜」を上演する 俳優・西藤将人さん

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フランスを代表する劇作家ベルナール=マリ・コルテス(1948―89年)の戯曲に、「森の直前の夜」という一人芝居があります。愚痴や嘆きなどのとりとめのない言葉に押し流され、ざわついた気持ちになります。この難解な作品に挑むのが、雲南市に拠点を置く俳優・西藤将人さん。1960年代から演劇界で活躍を続ける佐藤信さんの演出で9月2日、広島市西区の小劇場「山小屋シアター」に立ちます。作品や演劇への思いを、西藤さんに聞きました。

「訴える」切実な姿演じる

 

―文字で埋め尽くされた50㌻の戯曲。これを一人で演じると考えるだけで目まいがします。

舞台では男が延々と話し続け、演じると1時間半近い芝居になると思います。男と、男が「あんた」と呼ぶ人物は特定されているわけではありません。ただ、男は家なしでマイノリティ―側の人間なのは、はっきりと示されています。男の話に登場する娼婦(しょうふ)ら女性たちについても、本当なのか妄想なのかよく分かりません。そもそもタイトルの「森の直前の夜」って何だ、って感じですよね。

 

演出の佐藤信さんの受け売りですが、基本的には救いの物語です。主人公の男は、やりきれなさを何とか言葉にして訴えています。その「訴える」切実な行為が大切で、それができないと言葉の代償が暴力になってしまう危うさを秘めています。脈絡があるようなないような言葉をただ吐くしかなくて、でも生きていこうとする姿に、どこか希望が見えればいいのかなと思っています。せりふを繰り返していくうちに立ち上がってくるものがあり、面白くなるという手応えをつかめました。本番まで、構築と解体を繰り返しながら仕上げていきます。

演出家とのぜいたくな稽古

 

―この作品との出合いは。

信さんとは2017年頃、初めて出会いました。岸田国士戯曲賞などの受賞歴も多く、劇作家・演出家として輝かしい実績を持つ信さんが、なぜ僕をかわいがってくれるのか不思議なんです。信さんと話したくなって今年3月に会いに行くと、楽しく会話をした後にこの戯曲を渡されて「これやらない?」と誘われました。どうして僕とこの作品をつくろうと思ったのか、信さんに尋ねていないので僕にも分かりません。今回の公開稽古が終わってから、教えてもらうつもりです。

 

信さんとの稽古は、本当にぜいたくな時間です。信さんはこの作品を過去に2度演出していますが、あえて明確なビジョンを持たないようにしているようです。自由に演じさせてくれ、しかも僕という俳優のポテンシャルを最大限生かす方法を一緒に考えてくれます。俳優ってこんなに楽しいんだと気付かせてくれます。

「俳優として生きていきたい」

 

―独自の演劇的試みを実践してきた異色の俳優です。

島根では演劇を見たり体験したりしたことのない人がいて、それが悔しいと思ったのがきっかけとなり、劇団を主宰していた15年にチェリヴァホール(雲南市)で「365日公演」をやりました。元日からスタートし、他のアーティストの招致もしながら舞台に立ち続け、大みそかの千秋楽には465人収容のホールを満員にできました。

 

また、18年には「全国47都道府県ワンマンツアー」に挑みました。「10万年トランク」という一人芝居を全ての都道府県で計50ステージを上演しました。舞台で使うトランクを持ってバスや電車などを乗り継ぎ、ほとんど放浪の旅。おかげで、全国の演劇人とつながりました。

 

―チャレンジャーの西藤さんが次に目指すのは。

これまでは、演劇を大勢の人に隙間なく届けたいとか、演劇のために演劇をするんだと思っていました。今は、僕自身が俳優としての可能性を広げる方が大切だと考えています。演劇が好きというより、俳優として生きていきたいんでしょうね。

プロフィル

 

さいとう・まさひと 1983年生まれ、米子市出身。雲南市在住。2013年に劇団ハタチ族を旗揚げ。20年に解散するまで、「365日公演」(15年)や「全国47都道府県ワンマンツアー」(18年)など多彩な活動を展開。出演作品に、演劇引力廣島プロデュース公演「五十嵐伝〜五十嵐ハ燃エテイルカ〜2016広島版」(16年)、「異伝ヤマタノオロチ」(17年)、「異邦人の庭」(19年)など。地元での活動はワークショップ開催やナレーションのほか、朗読の指導など多岐にわたる。

 

作品情報

演劇「森の直前の夜」

作:ベルナール=マリ・コルテス

翻訳:佐伯隆幸

出演:西藤将人

演出・美術:佐藤信

日時:9月2日(土)16時開演

会場:山小屋シアター(広島市西区横川町3-12-3 アンゴラビル3階)

入場料:一般前売り3000円、U18前売り2000円(当日券はどちらもプラス500円)

※終演後にアフタートークあり

問い合わせ:090-4694-0014(渡部)

 

※広島以外での上演

8月29日 シアターねこ(愛媛県松山市)

8月31日 蛸蔵(高知県高知市)

9月4日 小野沢シネマ(島根県益田市)

9月6日 蔵庭(島根県江津市)

9月8、9日 チェリヴァホール(島根県雲南市)

9月10日 ビッグハート出雲(島根県出雲市)

この記事を書いた人

仁科久美(メディア中国編集部 ライター・編集者)

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