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映画監督・脚本家 井上 淳一さん/スポットライト

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映画監督・脚本家 井上 淳一さん

いのうえ・じゅんいち 1965年愛知県犬山市生まれ。早稲田大在学中から故・若松孝二監督に師事。監督作品に「戦争と一人の女」(2013年)、「大地を受け継ぐ」(15年)など。「止められるか、俺たちを」(18年、白石和彌監督)の脚本も担当。


7月から広島で「誰(た)がためにー」
映画で憲法の原点問う

社会的な問題から目をそらさず、作品の中での提起を続けている映画監督・脚本家の井上淳一さん。7月1日から横川シネマ(広島市西区)で公開される最新作「誰がために憲法はある」のPRのために、広島市を訪れた。「日本国憲法の原点を多くの人に見つめ直してもらう第一歩です」と熱っぽく語る。

一人芝居や前文の暗唱
作品の冒頭では、戦争を体験した86歳の俳優・渡辺美佐子さんが日本国憲法を擬人化した「憲法くん」を一人芝居で演じ、憲法前文を暗唱する。その渡辺さんの心の中には、疎開先の広島で被爆死した初恋の少年がずっといる。憲法くんの芝居と暗唱の後には、少年をはじめとする被爆犠牲者への鎮魂の思いを込めて、原爆朗読劇を30年余り全国巡演してきた渡辺さんら俳優たちの稽古や舞台の様子、インタビューを記録したドキュメンタリーが続く。「彼女たちの圧倒的な表現力と熱量のおかげで、戦争被害者一人一人の辛苦が浮き彫りになり、世界平和への貢献を誓う憲法の前文が現代人の心に深く刺さる名文だと再認識させられるはずです」と作品の狙いを話す。

師匠の言葉胸に作り続ける
国防軍の保持も明記する自民党の改憲草案を目にし、「映画は何もしなくていいのか」と危機感を抱く中で、芸人松元ヒロさんが20年以上も演じ続けてきた憲法くんを映画にしようとひらめいた。戦争を経験した高齢の俳優に憲法くんを演じてもらおうと、渡辺さんに出演を依頼。それが縁で渡辺さんの初恋の話や朗読劇の巡演が今夏で最後になると知り、憲法くんとドキュメンタリーがセットの映画に仕立てた。
4月末から首都圏の映画館で公開されると反響を呼び、客足は伸びている。渡辺さんたちにも、朗読劇の上演の問い合わせが殺到しているという。しかし、いつも思うのが「無関心層にどう届けるか」。上映中の映画館を頻繁に巡り、舞台あいさつやトークイベントで作品に込めた思いを語る。「師匠の若松孝二監督は、映画を武器に世界と戦うといつも話していました。表現者の端くれにいる僕も、そういった作品を作り続けるしかない」

2.jpgⓒ「誰がために憲法はある」製作運動体


映画あらすじ

「…本当でしょうか。私がリストラされるかもしれないっていう話」と語り始める「憲法くん」。「私というのは、戦争が終わった後、こんなに恐ろしくて悲しいことは、二度とあってはならない、という思いから生まれた、理想だったのではありませんか」と問い掛け、日本国憲法前文を一気にそらんじる。憲法くんを演じるのは、芸歴60年以上の名優・渡辺美佐子。渡辺らベテラン俳優によって結成された「夏の会」が昨夏、広島市内の中学生たちとともに上演した原爆朗読劇「夏の雲は忘れない」なども収められている。69分。

上映館/横川シネマ
出演/渡辺美佐子 高田敏江 寺田路恵
監督/井上淳一
「憲法くん」作/松元ヒロ

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